丸の内三菱一号館美術館で開催中(10/5~1/5)の
「三菱一号館美術館 名品選2013 近代への眼差し 印象派と世紀末美術」
を観た。
2010年の開館記念展「マネとモダン・パリ展」以来、
美術館としてのたゆまぬ歩みを続けてきた三菱一号館美術館の
集大成のような、画期的な展覧会であると思った。
美術館の建物は、お宝を披露するための単なる器になりがちである。
ところが、中に盛った名画との調和を果たし、街の空気ともつなげて見せる、
初めての美術館であると、思ってこれまでも興味深く見ていた。
こちらに語りかけてくる何かを美術館自体がもっている。
固定的な作品を展示するための空間ではなく、
様々な画家やコレクションを取り上げる美術館である。
開催されてきた美術展を貫くテーマを感じるのだ。
これは初めての体験である。
また、10月10日のトークイベントでの高橋明也館長が語られていたように、
「版画というグラフィックのちから」を感じさせる展覧会でもあった。
ルドン、ヴァロットン、ドニ、ボナール等の版画作品のまとまったコレクションは
視覚的にとても説得力があった。
その時代の画家だけでなく、複数の仕掛け人によって、グラフィック作品は
世に出され、人々に認められ、新しい美の楽しみ方を広げていった。
そのことがよくわかる内容であった。
また、画家の様々な側面を伝えてくれる展示でもあった。
黒の好きなルドンが次に描いたのは、鮮やかな色彩の作品。
そして、「グラン・ブーケ」。
248.3cm×162.9cmの大きさをもつ、このルドンのパステル画は、
1901年にブルゴーニュ地方の城館に設置されて以来110年もの間
非公開のままであったという。
それが、今こうして目の前で見られる幸せ。
見る人を優しく包み込むような、この甘美な調べ。
「ここに来てくれてありがとう」と誰もがそう思うにちがいない。
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