2014年6月26日木曜日

20年ぶりの対面「デュフィ展」


ラウル・デュフィ(1877ー1953/フランス北部ル・アーヴル生)は、
最も好きな画家のひとりである。


















透明感ある色彩と軽やかに踊る線、この二つの要素が、
それぞれ独立した魅力を保ちながら、絡まりあい、
デュフィの芸術を創り上げている。


1978年3月、初めて行ったパリ。
「プティ・パレ美術館」でたくさんのデュフィの作品に出合う。
広い空間の中で、心ゆくまで味わうことができた。




















絵と空間とともに忘れられないのが、
ベビーカーを押しながら美術作品を楽しんでいる若いお母さんたちの後ろ姿。
パりでは、芸術と人生、日々の暮らしが一体になって溶け合っている。
「それこそが、本当の美だ」。
そんなことを感じた21歳の頃。

















2回目は、「母」になって、6回目の夏。
幼稚園の行事「お泊り保育」に娘を送り届け、
その足ですぐ渋谷の美術館に向かった。
金曜日の夜だったが、人の少ない恵まれた空間で、
「デュフィ展」を観た。
会場にある、自動演奏のピアノから流れるのは、
その頃大好きになったサティの曲だった。




















たくさんのデュフィの絵に囲まれた感動は、今も同じだ。
絵を、自分自身でも描きたいという思いが、
身体の中から湧きあがってくる。

サティの曲をピアノで奏でることはできないが、
絵筆の先から、サティの曲がこぼれ出てくるような、
色と線を用いて描いてみたい。



























美術館の後のランチには、軽いフレンチを選ぶ。
「デュフィ展」のあとにはぴったりの店に友人が連れて行ってくれた。















パリにも行きたい。絵も描きたい。
青春時代の想いが身体の中を駆け巡った午後は、
ふんわりと淡い憧れとピリピリと辛い胸の痛みが
あいまって、不思議な味わいだった。






2014年6月25日水曜日

神楽坂のイタリアン「リストランテ ステファノ」


神楽坂に通勤していた10年くらいの間、
ランチは何度か食べに行ったけれど、
ディナーでは一度も行っていなかった気になっていたお店が、
「リストランテ ステファノ」。
東西線・神楽坂駅出口1から出て、左へ。
音楽之友社の向かい側、少し小路を入った奥にある。





















オーナーシェフ・ステファノさんは、イタリア・ヴェネト州の出身。
厨房とホールと両方を行き来して
忙しそうだけれど、やわらかいスマイルを欠かさず、
料理やワインをサービスしてくれる。





 



今夜は、家族3人が集合。
3種類のパスタやリゾットをオーダーしたところ、
一人分ずつお皿に取り分けて運んでくれた。



























最近は、イタリアンレストランも増え、
日本的に変化してきた味付けの店も多いが、
ここ「ステファノ」では、イタリアそのものを味わえる気がする。

家族3人で、旅をしたミラノ、フィレンツェ、ローマ。
ステファノの味には、その旅の思い出へとつながる懐かしさがある。

少し疲れていたとしても、仕事帰りに立ち寄れば、
小さな旅をしている気分になれる。
癒される店である。















2014年6月21日土曜日

護国寺茶寮「第28回柳営茶会」


地下鉄有楽町線の護国寺駅に着いたのは、ちょうど午前9時。

今日は、石州流伊佐派の磯野宗明先生のご縁を頼って
伺った「柳営茶会」。

石州流伊佐派は、千代田城(江戸城)内で教えていた流派であると
聞いている。

柳営茶会は、そのような江戸・徳川時代の伝統をいまに伝える、
武家茶道4流派によって、毎年開催されている。






















案内では「10時から」とあるが、
その1時間前には人が集まり、
その集まった様子を見て、第一席を始めるのが、
寄せ茶会である。
特に護国寺での茶会は人気があり、
ゆっくり出かけていたのでは、
1席しか入れずに帰ることにもなりかねない。

ということで、今日は、必ず3席は回ろう、と
張り切っていた。

すでに前を歩く方が何人も見える。



 階段を上り、「不老門」をくぐって、
まずは本堂へと進み、余裕をもって、ご本尊様にご挨拶。

こうでなくてはいけない。
これまでを振り返り、反省する。

茶会の朝には、着物を着る余裕、数寄屋袋(茶席に必要なふくさ、懐紙、
扇子、楊枝などの小物をまとめて入れる袋)と茶券を点検する余裕、
いろいろな余裕が必要である。




受け付けを済ませ、「会記」をいただいた。




荷物を預け、左手一番奥にある「月窓軒」の、
石州流伊佐派・八世磯野宗琢先生のお薄茶席へと急いだ。











床の掛物は、五代将軍綱吉の描いた「馬図」。
「柳営御物(りゅうえいごもつ)」として、
この茶会のために徳川宗家から拝借したものであるという。
今年は午年であるということもあるが、
護国寺が、綱吉が母の桂昌院のために建立した寺であることからも
今日の席にはふさわしい。

石州作の茶杓、石州好「切子釜」、石州好茶器「一文字桐」、
石州好天目茶碗「七ツ菊」などのお道具が揃い、
片桐石州侯の御席を偲ばせる席づくりであった。

将軍や大名家に伝わる立派なお道具にため息をつきながら、
お点前、お運びのかたがたの動き、所作の格調の高さに
正客をはじめ一同が静かに見入っていた。

お茶が点って初めて、正客が口を開く。
席主は、お身体を養生中の宗琢先生に代わって務められる宗明先生。
落ち着いたお話しぶりが、心に残った。






















点心をいただいたのち、
2席目は、濃茶席「牡丹の間」へ。
旧平戸藩主伝来・鎮信流宗家・松浦宏月先生のお席である。

松浦家伝来の品や平戸御庭焼などによるお道具組も、
ご宗家の対応も、大らかで、いかにも「殿様の茶」という感じだった。

歌舞伎「松浦の太鼓(まつらのたいこ)」では、
中村吉右衛門が演じる「松浦鎮信」を観たことがあるが、
あの「大らかさ」に通じる。

3席目に入った、立礼席(薄茶)は、
旧磐城平藩主伝来・御家流宗家。安藤綾信先生のお席。

長身のドイツ人男性がきりっとした「武家らしい」お点前をされ、
印象的であった。





















3席それぞれの味わいがある、よいお席だった。











 

2014年6月19日木曜日

中央区・京橋「リストランテ フィオレンツァ」


思いがけないところにある、思いがけない店に行った。

銀座通りを京橋に向かって歩き、
ガードをくぐって、左へ曲がったところにある
「リストランテ フィオレンツァ」。








































 以前、この店をたまたま、見つけて、気になっていた。

 ワインを飲みたくなり、この店を思い出した。
「敷居の高い店なのではないか」という心配もあったが、
店に電話すると、その不安はすぐに氷解。

「軽く、ワインを楽しみたいのですが」と尋ねると、
「コースではなく、アラカルトでも大丈夫ですよ」。
フレンドリーな対応。
すぐに予約した。

店に行くと、カウンター席を用意してくれていた。

テーブル席は、フォーマルな会も開けるような雰囲気だが、
カウンター席は、カジュアルに寛ぎながらワインを楽しむ
スペースとして用意しているようだった。






















「パスタコース」というリーズナブルなメニューもあり、
それに決めた。
ドルチェの代わりにチーズの注文もできる。




















運ばれてくる一つひとつの料理、
とくにパスタ料理の満足度がとても高かった。
一口ごとに、思いはトスカーナの地へ。

グラスワインも何種類か用意されていて、
どれもしっかりとした味わい。
料理によく合ったテイストである。

コースを食べ終わるともうお腹いっぱい。
気軽に単品料理を頼んでワインを楽しむこともできそうだ。






























18時に入った私達は最初の客だったが、
店を出る時には、ほぼ満席だった。

店の扉を閉める瞬間、友人と交わした言葉。
「次はいつにする?」。

料理、ワイン、空間。すべてに、気持ちよく酔える店だった。




2014年6月13日金曜日

銀座・泰明通り「カンティーナ シチリアーナ 6丁目店」



銀座・泰明小学校の前から「泰明通り」という
飲食店が並ぶ路地を入っていくと、
「カンティーナ シチリアーナ 6丁目店」がある。
以前から気になっていた店だ。

「シチリアのワインは夏に似合う」。
たまたま暑い日に冷えたシチリアの白を飲んで
「美味しかった~」という強い印象があるだけなのだが、
なんとなく自分の中に、そんなイメージが出来上がっている。

夜6時少し前、まだ空が明るいこの時間から
ワインをいただけるのは、ちょっと贅沢な気分。

予約していた2階の席に座ると、
窓から、ちょっとアンニュイな魅力のある路地を
眺めることができた。
 



店内は、落ち着いた色調でまとめられている。
ソムリエバッジをつけた男性がすぐにメニューを持ってきてくれる。

この店を選んでよかった。




料理は、新鮮な野菜や魚に、
レモンやアーモンドを活かした味付け。

 

 


 
 
ワインは、グラスで飲める種類が多いのが嬉しい。
 





 
グラス3杯で止めておくつもりだったが、
「本日のおすすめの1杯」というところに
目がとまり、もう一杯。
 
濃厚な味わい。言うことなし。
 
 


 

ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画、
「シチリア!シチリア!」で見たシチリアの風土は、
イタリアでありながらイタリアとはまたちがう、
空の突き抜けるような青と赤い土が印象的な
「異国」だった。
  しかし、その異国も、映画で、子供の目を通してみせられると、
親近感を覚える。
 
同じように、日本にいながら、
ワインや料理を通して、
彼の地の風土や文化を身近に感じられるとは、
なんとしあわせなことだろう。
 




















先週末の「梅雨入り宣言」から
ずっと降り続いていた雨がやんで、
夜風も気持ちのよい日だった。

しかも満月。
「明日もいいことありますように」。