映画『武士の献立』を観た。
江戸育ちで、卓越した味覚を持つ料理上手な
主人公(上戸綾)が加賀藩の包丁侍の家へ嫁ぎ、
夫(高良健吾)をしっかりと育て支えていくという流れに、
加賀藩のお家騒動や夫婦間の心のやり取りを絡ませ、
ストーリー展開もテンポよく、
タイトルからも想像できるように、
会席の御膳や四季折々の風景も目で楽しむことができる
満足度の高い映画だった。
しかし、ただそれだけではない。
もっと奥行きがある。
それはどこからくるのか。
たぶん台所という工房で、
自然界の恵みを料理へと変化させてく場面を
丁寧に描いているためだろう。
日本の生活文化の水準の高さを見せてくれた。
台所や奥向きの様子を動画にするのはむずかしい。
映画をつくるためには多くの下調べが必要だったにちがいない。
監督のこだわりが感じられる。
上戸彩の身のこなしがよい。
歌舞伎や茶道などの身体の動きには、
様式美ともいえる、見せるための美がある。
それも日本の文化の昇華した美にはちがいない。
しかし、この『武士の献立』を見て気づかされるのは、
登場人物たちが日常空間のなかで見せてくれる、
水準の高い「生活の美」である。
昔の日本人は立居振舞がこんなにも美しかったのだなあ、
と感動する。
日本という国の美しさは、普通の暮らしの中にこそある。
そう思う。
柚餅子(ゆべし)づくりの風景。
なんとのどかで美しいのだろう。
そこには自然を慈しみ、人の知恵を加え、感謝しながらいただく。
日本の本当の豊かさがある。
0 件のコメント:
コメントを投稿