世田谷パブリックシアターで、
井上ひさし作・栗山民也演出の「藪原検校(やぶはらけんぎょう)」を観た。
井上ひさしの戯曲は、演劇鑑賞に最近夢中のわが娘と共に、
昨年の9月新宿サザンシアターで初めて観た。
「きらめく星座」という芝居である。
言葉の、これでもかこれでもかという積み重ねのうちに、
次第に井上ひさしワールドに引き込まれている。
その快感を再び味わいたくてたまらなくなった。
そして今日、再び娘と共に観る。
「藪原検校」の筋書きは何も知らず、なんの知識もなかったが、
あっという間にその時代、その世界に引き込まれていった。
野村萬斎の演じる主人公・杉の市(二代目藪原検校)は、
彼以外にこの役をやることはむずかしいのではないか、と
思えるほどのはまり役だった。
杉の市は、悪行の限りを尽くして、最後は無残な死を遂げるが、
「処刑されてもやむをえない悪人だ」と思いながらも、
杉の市の死に自分自身もかかわったような辛い思いが重なる。
空間・脚本・役者etc.…素晴らしいエレメントが響きあう、
素晴らしい演劇体験ができた。
世田谷パブリックシアターは、
東急世田谷線駅の上に建つキャロットタワーの3階にある。
キャロットタワーは今や三軒茶屋のランドマーク的存在。
世田谷線の駅は、見違えるような空間になっていた。
下高井戸から三軒茶屋をつなぐ世田谷線。
かつて利用していた際は緑色だったなぁ。
その頃は「タマデン」と呼ばれていた。
2両編成であることには変わりはないが、
ピンク、ブルー、イエローとカラフルな色合いになり、
思わず乗ってみたくなる楽しげな姿になっている。
街中をこうした電車が動いていく風景は、
思いがけない空間を創り出し、街を個性ある顔にする。
「どこへ行っても同じ」は、一番がっかりさせられる。
駅周辺もとてもおしゃれになっていた。
13時半の芝居の前に、世田谷線改札口からすぐの「カフェマメヒコ」でランチ。
大豆ハンバーグのランチをいただく。
食と安全、食とアート、食とコミュニケーション、食を中心にして、さまざまなコンプトを同時に発信している店だった。
芝居がはねてからは、時間は限られていたが、せっかくのチャンスと思い、
「江戸五色不動」のひとつ「目青不動」に立ち寄った。
三代将軍徳川家光が江戸府内の名ある不動尊を
目白、目赤、目黒、目青、目黄と指定したと伝えられている。
五色とは[目」の色ではなく、東西南北中央の五方角を示したものだそうだ。
「目青不動」は、現在は教学院(世田谷区太子堂4丁目)内にあるが、
もとは港区麻布谷町(現六本木)の勧行寺(または正善寺)にあった。
1882(明治15年)青山南町にあった教学院に移転。
教学院の創建は1311年。
初めは後に江戸城内となる紅葉山の位置にあったが、
江戸城築城により麹町に移され、その後も赤坂、青山と移転し、
1910(明治43年)三軒茶屋に移転したそうだ。
境内で見つけた大きな頭を逆さにして咲く枝垂れ椿。
見事な大きさなのだが、自分の重さで逆さになってしまう椿の花。
舞台の中の杉の市の最後の姿と重なってしまった。
芝居もよかったが、
久々の三軒茶屋周辺散策は懐かしさもあり、
楽しい時間だった。
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