雨が降りだし、風も強かったが、桜は残ってくれた。
中目黒の駅で降り、目黒川沿いを10分ほど歩いたところに、
「カシーナ・カナミッラ」がある。
定期的に利用するようになったのは、
友人の紹介で、オーナーの長本和子さんに出会った時からのこと。
長本さんは、女優として活動中にイタリアを訪れ、
すっかりイタリアの魅力のとりこに。
いまは料理だけでなく、イタリアの文化を愛し、伝え、広げる、
お仕事をされている方である。
店内に入れば、
大きな大きな窓からの眺めと
イタリアの邸宅の中庭のような空間。
いきなり日常空間から切り離されて別空間に漂うようかのようである。
店は一つの舞台である。
オーナーやシェフ、サービスをしてくれる人に
立派な演出家や上手な演じ手はたくさん見かけるけれど、
客を主役にしてくれる店は、意外に少ない。
お皿の上もまた舞台。
桜マス、ハマグリ、ホワイトアスパラなど、
ありとあらゆる季節を感じさせる素材をお皿に登場させ、
思いがけない味つけと衣装で包む。
今夜のシェフの演出もまた、見事であった。
楽しい時間は瞬く間に過ぎる。
私達を主役にしてくれた名脇役の方々に拍手。
「また1年後、元気で、この舞台で再会できますように」。
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